「きょうちゃんのトレーナー」

先日、呑み屋で入れ墨だらけのアメリカ人の二人組とで逢った。

一人は「革ジャンとハーレーダビッドソン」が似合いそうな、サングラスをかけた初老の男。

もう一人は赤いバンダナを巻いたマッチョな若い男なのだが、清潔感があり、礼儀正しかった。

少し話をしてみると

日本が大好きで、アントニオ猪木さんを尊敬しているというプロレスラーの親子だという。

ふたりが本当にプロレスラーなのかはさておき、

店を出る際に「どうもね、サンキューね」なんて言いながらハグをしようとした時に、

私は見てしまった。

息子のオリヴァーくんのほうの首筋に彫られている入れ墨を見てしまった。

日本語である。

漢字でこう彫ってあった。

双子

えーと、、、

双子???!

心中はかなり混乱していたのだが、さずがに「おい!」と手の甲でツッコむわけにもいかないし、

頭の中が真っ白になって、なんだかクラクラしてきて、

別れ際の瞬時において私はその場でどうしてよいかまったく解らなかったので、

焦点の定まらぬ危うい意識のまま、「、、イェァ!」と笑顔でハイタッチをするなどして別れた。

もう忘れてしまいたくて、何事もなかったように千鳥足で駅の方へ歩いてみるものの、

頭の中は妄想の大渋滞である。

えーと何?、、

なんなの?

え?

オリヴァーくんは双子なの?

ピッツバーグに赤いバンダナを巻いたマッチョで清潔感のある礼儀正しい男がもうひとり、、

、、いるの?

彫った人はどんな言葉であの入れ墨を彼に勧めたの?

まさか父ちゃんの首筋に「双子の親」とか彫ってあったりするの?

何故だ、、

何故、彼は「双子」という文字を首筋に彫ったのだろうか。

もうそれ以外は何も考えられなくなった。

私はSUICAを取り出すためにギターケースを地面に置いたのだが、その時だった。

頭の中でフラッシュがたかれたように、ボシャッとひらめいた。

ふたご座だ!!

きっと彼は「ふたご座の男」なのである。

そうだそうだ。

おそらく。

うん、おそらくそうだ。

もう、そうでなければ説明がつかない。

仮に彼がふたご座の男で、日本のことが大好きで、

何というか、その、まぁ酔った勢いで「イカつい日本語の入れ墨」を彫ったとして、

彼の思いとは裏腹に我々日本人からすると「どこまでも可愛らしくうつる」というこの優しき世界。

思い出す。

小学生の頃、私の友達のきょうちゃんが「University of Minnesota」(ミネソタ大学)と大きくプリントされたトレーナーを毎日のように来ていた。
例えばの話、きょうちゃんが「あ!」なんつって行ったこともないニューヨークに野暮用を見つけ、その「University of Minnesotaトレーナー」を着たままハドソン川のほとりを笑顔で歩いていたとする。

これは例えば

初めて来日したアメリカ人の小さな子供が、江戸川のほとりを「山梨学院大学」とプリントされたTシャツを着て笑顔で歩いていることとほぼ同義ではないか。

非常に可愛らしい。

きょうちゃんを今すぐ抱きしめたいよ。

なんて優しい世界なんだ。

この世界は間違いなく愛で溢れている。

人間というものはなんて可愛らしい生き物なんだろう。

うん、私は明日からも積極的にあえてメッセージ性の強いTシャツを着て街を歩きたいと思う。

私はやぎ座の歌唄いなので、縦書きで「山羊の歌」とプリントしてあるTシャツを着たい。

そう「中原中也の処女詩集マジで超リスペクト系」である。

あと「KEITH RICHARDS FOR PRESIDENT」(キース・リチャーズを大統領に)と書かれたTシャツがあるのだが、このTシャツをアメリカではなくあえてロンドンの街で着てみたい!

ダサさを通り越して、もう、なんというか、もはや未知のワルである。

人生、まだまだやりたい事ばかりだ。

優しさについて唄いたい歌がたくさんある。

龍之介


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